インシデント管理、変更管理、問題管理をそれぞれ改善しても、利用者が感じるサービス品質が上がらないことがあります。原因の一つは、プロセスごとの局所最適です。ITIL 4では、需要や機会から価値が生まれるまでの活動を「サービスバリューストリーム」として捉えます。

プロセスではなく、価値の流れを見る

例えば「新しい業務機能を安全にリリースする」という価値ストリームには、要件整理、設計、開発、変更の評価、展開、サポートが関わります。部門の境界ではなく、価値が滞る場所を探すことで、本当に改善すべき課題が見えてきます。

可視化するときの問い

  • 誰の、どのような需要から始まるか
  • 価値が生まれたと判断する基準は何か
  • 待ち時間や手戻りはどこで発生しているか
  • 必要な情報が次の活動へ正しく渡っているか
ITSMの成果は、プロセス遵守率ではなく、利用者と事業にもたらした価値で測ります。

小さな価値ストリームから改善する

全社の運用を一度に変える必要はありません。頻度が高く、事業への影響が見えやすい一つのサービスから始め、流れと指標を可視化します。成功した改善パターンを別のサービスへ展開することで、無理なく定着させられます。

可視化の進め方

  1. 対象を決める:利用者、開始条件、期待する成果を一文で定義する。
  2. 実際の流れを描く:規程上の手順ではなく、現場で起きている活動と引き渡しを並べる。
  3. 時間を測る:作業時間だけでなく、承認待ちや情報待ちを確認する。
  4. 改善点を絞る:価値への影響が大きく、短期間で検証できる課題を選ぶ。

このとき、特定の部門や担当者を原因にしないことが重要です。問題の多くは、目標の不一致、情報の欠落、権限設計、ツール間の分断といった仕組みから生じます。

指標を「活動量」から「価値」へ変える

チケット処理件数や変更成功率は重要ですが、それだけでは事業への貢献を説明できません。価値ストリームでは、利用者が必要な機能を使えるまでの時間、業務停止の影響、再作業の割合、利用者満足度などを組み合わせます。

  • 需要を受けてから価値を提供するまでの総所要時間
  • 作業時間に対する待ち時間の割合
  • 手戻りや再オープンが発生した割合
  • 期待した成果を期限内に実現できた割合

ツール導入を先行させない

ワークフローの自動化は、価値の流れが理解できてから行います。目的や判断基準が曖昧なまま自動化すると、不要な承認や分断まで高速化してしまいます。まず流れを簡素化し、その後に標準化、自動化の順で進めると効果を確認しやすくなります。

まとめ

ITIL 4の価値ストリームは、個別プロセスの良し悪しではなく、需要から成果までを一つの流れとして捉えるための考え方です。小さなサービスを対象に、待ち時間、手戻り、成果を可視化し、部門を越えて改善を続けることが、IT運用を事業価値へつなげます。

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